日本証券業協会 私募債販売に新ルール導入へ
少数の投資家に販売する私募債を巡っては、「レセプト債」と呼ばれる商品の運用会社が破産して、投資家が損害賠償を求める訴訟を起こすなど、トラブルが相次いでいて、金融庁から業務改善命令などの処分を受けた証券会社はことしだけで13社に上っています。
このため、関係者によりますと、日本証券業協会は、会員の証券各社を対象に新たな規則を設ける方針を固めました。
具体的には、私募債を販売する証券会社は、発行会社の財務状況や商品の安全性を事前に審査し、販売したあとも年に1回以上審査を続けて、投資家に情報を提供するよう義務づけます。
そして、違反した場合には最大5億円の過怠金の支払いを命じるなどの罰則を科すことにしています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161215/k10010807151000.html
今年の夏頃から検討が重ねられてきた結果,上記の方針に至ったようです。①発行会社の財務状況や商品の安全性を事前に審査し,②販売したあとも年に1回以上審査を続けて,投資家に情報を提供するよう義務づけるという内容は,ゲートキーパーとしての役割(投資者保護に反する有価証券等が投資家まで到達しないように,証券会社が門前払いする役割のことを指します)を担う証券会社であれば自主規制の有無にかかわらず遵守すべき当然の規定で,あえて自主規制を設けるまでの必要もないように思います。
しかしながら,レセプト債に象徴されるように,発行会社に関する財務資料を全く入手せずに,顧客に私募を販売した証券会社が,全国的に,しかも複数の会社にわたって存在していたため,上記自主規制導入方針に至ったものと思われます。
今後,レセプト債のような事件が起きないようにする目的は理解できますが,反面で,このようなある意味,当然ともいえる自主規制策を導入しなければならないほど,私募債を巡る一連の行政処分を受けた証券会社が審査をしていなかったことが裏付けられていると感じました。
強制執行における事前調査の重要性~預貯金の探知
裁判等で判決を取得した場合,相手方が任意に支払を命じられた金額を支払ってくれない場合もあります。つまり,勝訴判決があるのに,債権が一切回収できないという場合もありえます。
その場合,判決に基づき強制執行をすることになります。強制執行の申立てそのものは,インターネットでも書式等が公開されており,定型的な類型であれば,弁護士の力を借りずとも,本人で何とか申立てをすることができることもあります。
ところで,強制執行のうち,預貯金に対する強制執行については,銀行名だけでなく,支店名まで特定して強制執行を申し立てる必要があります。ところが,実際には,強制執行の相手方の預金口座については,口座番号はもちろんのこと,支店名すら全くわからないということがよくあります。
かつては,相手方の住所地付近を地図で調べて,自宅付近の銀行支店を適当に選んで,強制執行するという手法も用いられていましたが,当然ながら,効率が悪く,うまく回収できない場合も多くありました。
ところが,最近は多くの都銀,地銀などで,判決を取得している場合に,弁護士会照会(23条照会)という制度を利用することで,支店名,口座番号,残高等を回答してくれる傾向にあります(金融法務事情2040号6頁「座談会 地域金融機関における弁護士会照会制度の現状と課題」)。この点だけをとっても,強制執行を弁護士に依頼するメリットは高いといえます。残高まで分かっていれば,強制執行を効果的にできることは自明です。
また,強制執行は申立て自体は,定型的に行えますが,その後の手続において,競合する債権者がいる場合に回収方法を高めるための手法,強制執行以外の手法を用いて債権回収を図る手法など細かい点については,弁護士でなければ分からないことも多いのが実情です。
そのため,強制執行では,弁護士会照会を利用して調査を十分に行い,調査結果に基づく効果的な強制執行を実施するためにも,費用がかかってでも弁護士に依頼するメリットは高いといえます。
人材紹介会社が紹介した人物の経歴が全くのデタラメである場合
ここ最近,人材バンクとか人財紹介などといった職業がもてはやされるようになっている。この点に関する法律の規制もあるにはあるものの,おそらく人材紹介を利用する企業側が予想している法規制とはなっていない。
人材バンクを利用するニーズはそれぞれ異なるものの,一定の場合,代表者に代わって,会社のマネジメントを行わせるとか,将来の代表者となりうる人財の紹介を希望するという場合も往々にして見られるニーズである。要するに,多忙を極める代表者にとっては,自らの右腕あるいは後継者となる人物を紹介する人材バンクが魅力的に映るようである。多くの人材バンクでは,上記ニーズを取り入れて,顧客となる会社向けに,会社の輝かしい発展のために必要不可欠な人材を紹介するとの宣伝文句を用い,人材バンクを通じて紹介された人物の経歴は,「人材」と呼ぶにふさわしいように,有名会社の管理職を務めていたとか,売り上げを前年比数倍にしたとか華々しい経歴が記載され,紹介されることが多いようです。
これらの紹介された経歴が真実である場合には,さほど問題が生じることはありません。
他方で,人材とされる本人が経歴を詐称し,紹介された経歴が全くのデタラメであった場合,利用者の会社側とすれば,年俸の数割程度に達する高額の紹介料(多くの場合は100万円は大きく超えます)を支払っていたのに,紹介された人物の経歴が全くのデタラメなのであるから,紹介してきた人材バンクに対して,紹介料などに関する返還請求ができると考えがちです。
しかし,上記事例を扱った下級審裁判例では,人材バンクには何らの責任がないと判断している。人材バンクの実務としては,紹介を申し込んできた人物(人材)の職業選択の自由などに配慮せざるを得ず,その経歴について精査する権限もないし,法制度上は,そのような精査をするまでもなく,すぐに紹介するべきであるとされている。つまり,法律上の制度としては,人材バンクで,精査することは許されず,そのため,紹介した人材の経歴が全くのデタラメであっても,人材バンクは責任を負わなくてもよいとされています。また,採否については,ユーザーである企業側が最終的に判断することも理由の一つのようです。
そのため,人材バンクのユーザーである企業としては,多額の紹介料を支払っているのに,「人材」とされた人物の経歴がデタラメであっても,人材バンクへの責任追及ができず,利用者の意識と法制度が完全に乖離しています。
いくら,採用するか否かは,ユーザーである企業側に最終的な判断権があるとはいえ,高額の報酬を取得しつつ,紹介した経歴が全くのデタラメであるのに人材バンクが全くの責任を負わないというは常識に反するというべきです。このリスクを避けるためには,人材バンクとの紹介契約書上で,経歴詐称があった場合には一定の責任を負担する旨の契約条項を設けておくなどのリスク回避策も考えられますが、そのような条項修正に応じる人材バンクは少数派ではないかと思われます。
当事務所では,人材バンクに関する企業側(ユーザー)の相談,契約書作成への助言についても受け付けておりますので,人材バンクを利用される場合には,事前にご相談されることをおすすめいたします。
レセプト債訴訟・期日報告
≪第1次訴訟弁論準備手続期日≫
本日午前11時から,第1次訴訟の弁論準備手続(テレビ電話会議)が開かれました。
期日で金沢地方裁判所に出廷したのは,竹松証券の代理人のみで,その他の代理人は東京地方裁判所に出頭してテレビ電話回線を通じて期日が行われました。。
期日では,原告ら準備書面のほか,被告らから提出された準備書面がそれぞれ陳述されました。
また,双方から提出された証拠類も取り調べされました。
≪今後の予定≫
今後,第1次訴訟については,第2次訴訟と併合される予定です。
12月28日までに,被告らから,原告らの主張に対する反論や求釈明申出に対する回答等がなされる予定です。
次回期日は,平成29年1月12日午後1時30分,次々回期日は3月27日午前11時となりました。いずれもテレビ電話会議システムを利用して争点整理がなされる予定です。
なお,第3次訴訟については,現在も準備を進めているところで,遅くとも今月中には提訴予定です。
また,既にご案内のとおり10月25日午前10時に,依頼者向けの経過報告会を開催する予定ですので,ご都合が付く方についてはご参加いただきますようお願いします。